これも違う。
 それも違う。
 ぼくはただ、



 シャツの前をはだけて入りこんだ指先が紅い蛇の上をなぞる、たどる。
 これはもう何度目かの行為で、重なるうちに身を焼くような熱を覚えて
しまった体は求める以外のことを許さない。
 触れあって互いに荒くなった息遣いが、…繋がったところが、熱い。

「はっ、っ」

 元の呼吸を取り戻しながら手を伸ばす、掴んだネズミの服の前をはだける。
そうして、しっとりと汗ばんだ胸に触れた。
 かたい胸はけれど確かにあたたかく、少し早い鼓動が手に伝わってきた。
 ネズミが驚いたような顔をする。

「……積極的なことで」
「……いや、ぼくだけ脱いでるの、なんか癪だから」
「なんだよ、それ」

 なおも服を脱がしにかかろうとする手をネズミに掴んで止められた。

「あんたに脱がせてもらうなんて情けないのはごめんだね」
「あっ、ひどいな」

 ぼくの手で中途半端にはだけられたシャツを脱ぎ捨てて、ネズミが覆い
被さってきた。
 互いの額と額が軽くぶつかる。
 目の前の艶やかな灰色の瞳に自分が映りこんだ。

「これで満足か?」

「ぅ、あっ」

 ネズミが動いたことでその存在を必要以上に感じてしまい、深い皺を
刻むのさえかまわずにシーツを強く握りしめる。
 この余裕がいつも悔しい。

「……おい、腕、こっちにまわせって」
「ぇ、…っ、あ」

 力の入れすぎで白くなった腕を取られて、自分の肩にまわすよう導かれる。
 本当に、どこまで余裕なんだ。
 けれどこんなものは違う、ぼくはそんなことを望んでいるんじゃない。
 ネズミ、ぼくは、きみに。

「おい、」

 縋りたいんじゃない。

「別に、背中に爪をたてたっていい、」

 傷をつけたいんじゃない。

「ほら、」

 ただ、
 ―伝えたいんだ。


 とっさに、腕を掴んでいるネズミの手を払い、

「……ネズミ、違う」
「……なに?」

 そしてネズミの肩を掴んで迫り、一気にまくしたてた。

「ぼくは、きみに縋りたいわけでも傷をつけたいわけでもない。ただ、
思いを伝えたいだけなんだ、それをきみは」
「待った」
「なっ」

 ネズミの長い指がちょうどぼくに掴まれているあたり、自身の左肩を指す。

「あのさ、傷ならもう4年も前にすでにあんたにつけられてるんだけど。
しかも、もしかしなくても一生消えなさそうな奴を」

 初めて出会ったあの日に治療した傷は、痕になって今もネズミの皮膚の
上にある。たぶん、消えることはない。

「それは、仕方ないことだ。第一、ああしなかったらきみは今頃…」
「まあ、感謝はしてる」
「なんか嘘っぽいな」

 からかうように言えば、おもむろに額に唇が押しつけられた。

「なら、本気を今から試してみるか」

 華のような極上の笑み? それとも、妖しく光った灰色の瞳?
 そのどちらも息をのむほど美しく、どちらに鳥肌がたったのかはわからない。

 けれどとにかく、今から夜通しネズミの本気≠思い知らされることに
なってしまったらしく、今夜は眠れないだろうことをぼくは確信したのだった。






ほんのり#5ネタ? しかもえろす版(おい
ヒィィあかんラブがわたしの臨界点を振り切った!!
ちょっともうこれ自分で読み返せないかもしれません…(苦笑)
ウチのネズさんは書いているわたしのドSっぷりが伝染してしまっている
のでS気味です。
あーそう考えるとわたしヘタレ攻めって書けないんじゃねぇ…ええぇぇ。



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