たった四文字。

 たった四文字の何気ない挨拶だ。

 なのに、おれは最近そんなちっぽけなものに振り回されている。

 おれはいつから、こんなものを欲しがるようになった?



 雑多な市場を足早に通り過ぎて、舞い降りた闇に紛れるように家路をたどる。

 明るい場所は元々好きではなかった。
 すべてを覆い隠すような深い闇が好きだった。

 そんな自分であるから、眩しく光るあれを招き入れたのは失敗だったと思う。
 あれが在る限り完全な闇は作りだせない。
 眩しいが、今はまだ小さいあの光にいつか飲みこまれることがないように、と
柄にもなく不安を抱えていたりする。


 …馬鹿馬鹿しい。


 舌打ちをして、階段をくだる、ドアを開ける。


「…あ、」


 おれに気がつく。振り向く。口を開く。


「おかえり」


 そう言って、いつも笑う。
 立ち上がった影はキッチンへ走り、


「ごはん、すぐ作るから待ってて」
「いや、いい。今日はおれが」
「? ……そう? じゃあ」


 使い古されたおたまが手渡された。



「最近、遅いんだね」
「……まあ、な」


 わざとだと言ったら。
 あんたの口からその四文字が欲しくて遅いと言ったらあんたはどんな顔をする?


「明日も遅くなる」
「わかった」



 もしかしたらおれはもう飲みこまれていて、その事実から目を背けたいだけなの
かもしれない。


 そうしてまた今日も、


「おかえり」


 その四文字が、何故か欲しくて遅くに帰る。




ネズ視点…?
スランプ脱出しきれてな い …!
ひとの名前を出さない書き方がしたいなあとおもったんですが撃沈してしまいました(汗)
久々の更新なのにもうしわけない…
しかしなんだこの新婚みたいなのは…(苦笑)



窓を閉じてお戻りください。