すごい殺し文句を言う男を知っている。
 それも、男のぼくに向かってだ。
 いままで何度も似たようなことがあったけれどいつになっても慣れない。いや、慣れてしまって
はいけないのだ。
 彼に、秋本貴史に簡単に心を許してはいけない。
 それがぼく、瀬田歩の月間…いや、年間目標だった。
 なのに。
 それなのに。





「歩、秋山くんよ」
「秋本です」
「あらっ、ごめんなさい。また間違えちゃった」
「いえ。じゃ、おかまいなく」


 母さんとそんな会話を交わしながらその日、秋本貴史はいきなりぼくの部屋を訪ねてきた。
 我が物顔でぼくのベッドに寝転がって、きちんと整えられていたシーツをめちゃめちゃにして
いる。秋本の広い背中にむかってぼくは盛大なため息をついた。
「…それで?」
「ん? なんや、歩」
 ベッドの上に起き上がって、秋本はぼくに目線を近づけた。ぼくは立っていて、相手は座って
いるのに。悔しい。腹立たしい。いったい何をどうしたらこんなにでかくなるんだろう?
「秋山くんは、おれの部屋に、いったい何をしにきたんですか?」




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