まだ完全に起ききれてはいないまどろみの中で、食事のいい匂いがした。
 続いて、人の気配。

「おい、紫苑、起きろ。朝飯できたぞ」
「…ん」

 つめたい手がぺしぺしと頬を叩く。
 うっすらと目を開けると、目の前にネズミの顔があった。
 その怒っているような、呆れているような顔をぼんやりと見つめていると、

「ったく、今日はあんたが朝飯作る日だったのに、あんたがいつまで経っても起きないから
結局おれが作る羽目になったじゃないか。せ明け方まで本読んでたとかそんなところだろう」

 悔しいけれど、それは図星。
 ネズミの顔がさらに近づく。

「ああ、もう。鼻、噛んでやろうか」
「いい、遠慮しておく…」

 眠い。
 まだ休息を求めている身体が、ひとりでにふたたび瞼を閉じさせようとする。

「おい、こら、二度寝するな」
「んんー…」

 睡魔に引きこまれそうになって、ネズミに大きく身体を揺すられる。
 ベッドがぎしぎしと軋んだ音をたてた。

「わかったよ。…あんたがそのつもりなら」

 不意にさらりと髪を撫でた指が頬をたどり、顎にかかる。
 妙にやさしい手がくすぐったいとさえ感じた。
 …それは、危険な予感。
 しかし時すでに遅し。

「…陛下には、お目覚めのキスが必要ですか?」

 耳元で艶っぽい囁きが聞こえたかと思うと同時に唇に重なった柔らかな感触。

「! む、んんっ、」

 何が起こったのかわからなくて、夢中でネズミの肩を掴んで押して引きはがす。

「なっ、きみはもっと普通の起こし方はできないのか」
「普通に起こしても起きなかった」
「それは…」
「はいはい、おはようございます、陛下。朝食の用意が整っております、冷めないうちにどうぞ」

 手を引かれ、ベッドから降ろされた。




「今日はなんのスープ?」
「鶏肉」
「好物だ」
「へぇ、どうしてだ?」
「きみが最初に作ってくれたのがこれで、おいしかったから」
「…それはどうも」

 温かいスープはやはりおいしかった。
 料理の腕だけならいいお嫁さんになれそうだな、ふとそんなおかしな考えが頭をよぎる。

「明日はあんたが作れよ」
「わかってるよ」

 ―でも、こんな気まぐれで神経質、かと思えばずぼらでいいかげんで、ついでに寝相が悪い
お嫁さんはごめんだな。

 思わず笑いがこぼれた。

「何笑ってる」
「ううん、なんでもない」

 自分を見て笑うぼくに気がついたネズミが、じとりとこっちを睨んでくるけれど気にしない。
 ネズミに背を向け、空になったふたり分の皿をすすぐべく持って、ぼくは席を立ったのだった。




王道、かつわたしの萌えシチュ(笑)
不意打ちちゅーが好きです。
当サイト比でいつもより2割くらい紫苑が攻めです(見えない
でもなんか新婚家庭一歩手前みたいでアレだな!(笑)
しかしいまだにちょっとスランプみたいです…調子が出ない…!



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